2014/05/14

Last night at three


John Atkinson Grimshaw

今宵もまた刃形の月が出ている。青い月光に照らされて、
(かわら)がどこまでも続いている。何十年もかかって、自分が
歩いて来た磧である。磧はどこまでも見渡せる。よくこ
んなに見渡せると思うほど遠くまで見渡せる。その磧の
道を人が歩いて来る。いつか一度会い、それ限り思い出
さなかった人である。曾(かつて)て交わした会話を、もう一度交す
ためにやって来るのである。そのためだけに、その人は
やって来る。 やがて、私たちは言葉を交わす。現在とは無
関係で、遠い過去の、その時だけ意味を持っていた言葉
が、月光のなかを走り、光り、凍る。一瞬にして演技は終
り、その人は居なくなる。あとには言葉だけが残る。私
は言葉と一緒に残されている。凍った言葉は、私の掌の
中で次第に重さを増してくる。その言葉の重さに耐えか
ねて、私は次第に小さくなる。どこまでもどこまでも、
小さくなって行く。
月光が消え、磧の道が消える。私は再びもとの大きさを
取り戻す。私の掌から言葉は消えて失くなっている。
その頃から風の音が聞えてくる。私は一人の旅人となって
歩き出す。まだ歩いたことのない遠い先きに向かって歩き
出す。言葉の持った冷たさだけが、私には残されている。

"夜半の眼覚め"
井上 靖



Yesterday, on the street,
I met a man who wasn't there.
He wasn't there again today,
I wish, I wish he'd go away...

When I came home last night at three,
The man was waiting there for me
But when I looked around the hall,
I couldn't see him there at all !




Go away, go away, don't you come back any more !
Go away, go away, and please don't slam the door...



 Last night I saw upon the stair,
A little man who wasn't there,
He wasn't there again today
Oh, how I wish he'd go away...

is an 1899 poem by American poet Hughes Mearns
It is also known as "The Little Man Who Wasn't There".
It is said the poem was inspired by tales
of a ghost roaming the stairs of a haunted
house in Antigonish, Nova Scotia, Canada.



" The Man Who Sold the World
by  David Bowie
Bowie commented about the song:
" You have this great searching, this great need to find out
who you really are."



当初、幽霊話にするつもりはありませんでした。
ただ、"夜半の眼覚め" に感動し、
似た雰囲気を持つ英詩を探していたら
こんな感じになってしまいました。
なんでこうなっちゃうかなぁ?

From Millan.NetFrom Millan.Net
追 記

哲学者、池田晶子先生が「14歳からの哲学」で こう述べています。
― 君が毎日やっているその自分とは、本当は何なのか、知りたくないはずはないでしょう。
もしも君とは、君が単純に思っているように君の体だとしたら、体が死んだら君は死ぬよね。
でも、もし君とは君の体じゃないとしたら、体が死んでも君は死なないことになるのだけれども、
それとも、そんなこと知りたくないかな。―
 

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