All the leaves are brown
And the sky is gray
I've been for a walk
On a winter's day
And the sky is gray
I've been for a walk
On a winter's day
いまもよく覚えているが、あれは寒々しい十二月のことだった
Ah, distinctly I remember it was in the bleak December;
悲しさに心の痛む思いで、私は闇に背をむけて部屋に戻った
Back into the chamber turning, all my soul within me burning,
われら人間のうちでこんなことに出会った者がいるだろうか
自分の書斎のドアの上に一羽の鳥をみつけたうえ
やつが鳥にせよ 獣にせよ
この大鴉 一語を発したのみなのだ。
We cannot help agreeing that no living human being
Ever yet was blessed with seeing bird above his chamber door ―
Bird or beast, the raven, spoke only that one word.
明日はこの鴉も飛び去るだろう ―
ちょうどわが希望の数々が飛び去ったように
すると大鴉は言った、"Nevermore"
On the morrow he will leave me,
as my Hope have flown before.
The the bird said "Nevermore"
鴉もいまや鋭い眼で わが胸の奥を焼きこがすかのように
見つめているばかり ―
The fowl whose fiery eyes now burned into
" 鴉にせよ悪魔にせよ、予言する者よ !
その Nevermore の一語を
その Nevermore の一語を
われらの別れの言葉としよう ! "
"Prophet still, if bird or devil !
Be that word our sign parting !"
Be that word our sign parting !"
" 戻れ あの嵐の中へ 黒い地獄の岸へ !
私の孤独をもう乱すな ―
この胸に突き刺さったお前のくちばしを抜け !
そしてわがドアからその姿を消してしまえ ! "
そしてわがドアからその姿を消してしまえ ! "
"Get thee back into the tempest and the Night's Pluto-nian shore !
Leave my loneliness unbroken !
Take thy beak from out my heart, and take thy form
from off my door !"
from off my door !"
大鴉は言った Quoth the Raven
"Nevermore"
私は涯しない野原をさまようてゐた。 風は四方の地平から私を呼び、私の
袖を捉へ裾をめぐり、そしてまたその荒まじい叫び声をどこかへ消してしまふ。
その時私はふと枯草の上に捨てられてある一枚の黒い上衣を見つけた。
私はまたどこからともなく私に呼びかける声を聞いた。
とまれ!
私は立ちどまつて周囲に声のありかを探した。私は恐怖を感じた。
飛べ!
しかし何といふ奇異な、思ひがけない言葉であらう。私は自分の手足を顧みた。
とまれ!
私は立ちどまつて周囲に声のありかを探した。私は恐怖を感じた。
飛べ!
しかし何といふ奇異な、思ひがけない言葉であらう。私は自分の手足を顧みた。
手は長い翼になつて両腋に畳まれ、鱗をならべた足は三本の指で石ころを
踏んでゐた。 私の心はまた服従の用意をした。
飛べ!
私は促されて土を蹴つた。私の心は急に怒りに満ち溢れ、鋭い悲哀に貫かれて、
飛べ!
私は促されて土を蹴つた。私の心は急に怒りに満ち溢れ、鋭い悲哀に貫かれて、
ただひたすらにこの屈辱の地をあとに、あてもなく一直線に翔つていつた。
感情が感情に鞭うち、意志が意志に鞭うちながら。
私は永い時間を飛んでゐた。そしてもはや今、あの惨めな敗北からは遠く飛び去つて、
翼には疲労を感じ、私の敗北の祝福さるべき希望の空を夢みてゐた。
それだのに、ああ! なほその時私の耳に近く聞えたのは
あの執拗
な命令の声ではなかつたか。
啼け!
おお、今こそ私は啼くであらう。
啼け!
よろしい、私は啼く。
そして、啼きながら私は飛んでゐた。飛びながら私は啼いてゐた。
ああ、ああ、ああ、ああ、
ああ、ああ、ああ、ああ、
風が吹いてゐた。その風に秋が木葉をまくやうに私は言葉を撒いてゐた。
啼け!
おお、今こそ私は啼くであらう。
啼け!
よろしい、私は啼く。
そして、啼きながら私は飛んでゐた。飛びながら私は啼いてゐた。
ああ、ああ、ああ、ああ、
ああ、ああ、ああ、ああ、
風が吹いてゐた。その風に秋が木葉をまくやうに私は言葉を撒いてゐた。
冷めたいものがしきりに頬を流れてゐた。
鴉 / 三好達治
大空を翔る旅人である時は 素晴らしい詩を 囀る「詩人」も
いったん「現実」に取り囲まれるやいなや、その真価を発揮することもかなわず
嘲笑される存在 鴉や信天翁のよう。
これが 「詩人の運命だ」 と
ポーを フランス語に訳した シャルル・ボードレール はいう。
「鴉」 はフランス象徴詩から影響をうけた
三好の「詩人観」に基づくものなのかもしれません。
私は鴉が嫌いではありません。
私達 大の大人も 時には灰色の冬空を翔け
彼らのように 啼きたいものですね。
ああ、ああ、ああ、ああ、
ああ、ああ、ああ、ああ、
鴉 / 三好達治
大空を翔る旅人である時は 素晴らしい詩を 囀る「詩人」も
いったん「現実」に取り囲まれるやいなや、その真価を発揮することもかなわず
嘲笑される存在 鴉や信天翁のよう。
これが 「詩人の運命だ」 と
ポーを フランス語に訳した シャルル・ボードレール はいう。
「鴉」 はフランス象徴詩から影響をうけた
三好の「詩人観」に基づくものなのかもしれません。
私は鴉が嫌いではありません。
私達 大の大人も 時には灰色の冬空を翔け
彼らのように 啼きたいものですね。
ああ、ああ、ああ、ああ、
ああ、ああ、ああ、ああ、