2013/02/07

Don't go to Strangers


Far out in the ocean the water is as blue as the petals
of the most beautiful corn-flower,
and as clear as the purest glass.

 はるか沖へ出ると、海の水は青味のいちばん強いヤグルマソウに負けないくらいに青く、
また、いちばん透明な水晶に負けないくらい澄みきっている。



 But it is very deep-much deeper, indeed, 
than any cable can sound.
Many steeples would have to be piled one on top of the other
to reach from the bottom to the surface of the water.

 でも、沖はとても深くて、いかり 綱をおろして深さを測ろうにも測れないし、
たとえ海の底に、たくさんの尖塔を次から次に積み重ねたとしても、
水面にはとどかないだろう。


 Down there live the sea-folk.
人魚が住んでいるのは、そんな海の底なのだ。

 
Nothing gave the little mermaid princess pleasure 
 than to hear stories about the world of men above,
and her old grandmother had to tell her all she knew
about ships and towns, men and animals.


人魚の姫さまは、はるか上方にある人間の世界の話を聞くことを、
なによりの楽しみにしていた。
年老いたおばあさまにせがんで、船や町や人々びとや動物のことを、
知っているかぎり何でも話してもらった。


" When you are fifteen years old, " said the grandmother,
 " you will be allowed to rise up to the surface of the sea and 
sit on the rocks in the moonlight, and see the big ships as they sail by. 
Then you will also see the forests and towns. "



「おまえたちが 十五 になったらね」 と、おばあさまは言った。
「海の上に浮かびあがって、月の光を浴びながら岩にすわり、
海を行く大きな船を見ることができるようになりますよ。
それから、森だって、町だって、見られますからね。」


 Oh, how the little princess listened to all this !
 And when, later on in the evening, she again stood at the open window,
looking up through the dark blue water, she thought of the big town,
with all its bustle and noise、and imagined she could hear the church bells
ringing, even down where she was.
 
その話を聞いてからというもの、姫さまは、夕方にになるといつも、
開いた窓のそばに立ち、青い水のかなを見あげるようになった。
そして、いろいろな音がひびくという町のことを、あれこれ想像してみるのだ。
すると、どうだろう。 ときには教会の鐘の音さえ、
はるか海の下の姫さまの耳もとまで、ひびいてくるような気がした。 

 
 

Sacred Heart Cathedral / 横浜山手教会

The year after she was allowed to go up to the surface,
and swim about as she pleased.

彼女は許されて海の上へ浮かびあがって、
どこへでも自由に泳いでゆけることになった。

  
Then, a little black animal it was a dog, 
but she had never seen a dog before
came out and barked so ferociously at her that she was frightened, 
and hurried back as fast as she could to the open sea.

ちいさくて黒い動物が近づいてきた。 犬だ。
でも、姫さまは犬など見たことがなかった。
しかもその犬が、姫さまにむかってワンワンとはげしく吠えたものだから、
姫さまはこわくなって沖へもどった。

 

More and more she grew to love the human beings, 
and more and more she longed to be able to live among them.

そうこうするうちに、姫さまは人間にあこがれるようになった。
人間の世界にはいって 仲間になりたいと思いはじめた。
 
" Human beings, " asked the little mermaid
" can they live for ever ? "


「おばあさま、人間というものは、死なないのですか?」
と小さな人魚の姫さまはたずねた。

The old lady said,
年とった貴婦人は言った。

" They also die, and their life is even shorter than ours.
We can live to be three hundred years old,
but when we cease to exist we are turned into foam on the water.
We have not got immortal souls, and can never live again.

 

「人間だって死ぬのですよ。それも、わたしたちより、ずっと早死になのです。
わたくしたちは三百年も生きられるけれども、その代わりに、
死んでしまえば泡になって、海の上に浮きでてしまいます。
わたくしたちはこの先も、死なない魂をもつことはできないし、
また生まれかわれるわけでもありません。

We are like the green rushes, which, 
when once cut down, can never grow again.


わたくしたちはね、ほら、あの緑色をしたアシと同じなのよ。
だって、アシは一度刈られてしまうと、二度と緑の葉をのばすことができないでしょう。
    
Man is but a reed (rush), the weakest in nature, but he is a thinking reed.

「人間は ひとの 葦/アシにすぎない。自然のなかで最も弱いものである。 だが、それは考える葦である。
たとえ宇宙が彼をおしつぶしても、人間は彼を殺すものより尊いだろう。
なぜなら、彼は自分が死ぬことと、宇宙の自分 に対する優勢を知っているからである。
宇宙は何も知らない。だから、われわれの尊厳のすべては、考えることのなかにある」
パスカル 「パンセ」 よ


 Human beings, however, have a soul which lives for ever,
lives even after the body has become dust;
it rises through the clear air up to the shining stars.
 
けれども、人間にはね、いつまでたっても滅びない魂があるのよ。
それは、体が死んで土にもどっても、生き残るの。
そうして、澄んだ空気のなかを浮かびがって、
美しい、星ぼしのところまでのぼっていくのです!

 

As we rise out of the water and see all the countries of the earth,
so they rise to unknown, beautiful regions which we shall never see. "

そうよ、わたくしたちが海の上まで浮かびあがって、人間の国を眺めるのと同じように、
人間の魂は、人魚には決して見られない美しいところへ、のぼっていくのですよ。」


 

Don't Go To Strangers   / よそには行かないで

 以前は、人魚姫のかなわぬ恋に涙したものです。 

今では人の魂のゆくへが気になります。∈(*´◇`*)∋

8 件のコメント:

  1. このお話って創作なんですか? 絵本作家になれそうですね。 :)

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  2. cocominoさん こんにちは。 いつもありがとうございます!
     アンデルセンの原作/荒俣 宏さん訳 文集文庫集からの抜粋なんです。
     子供の頃読んだ絵本は 子供向けに作られたものだったのでしょう。
     おそらく子供では原作は理解できないことでしょう。
     
     

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  3. ストーリーと間に入る写真、絵、歌が絶妙かつ精緻に配列されて確固たる世界を確立してますね。誰かが死後の世界は亡くなった人には存在しないけど残された人々の心の中に存在する、って事を言ってたのを思い出しました。人間の魂も、それを引き継いだ人、あるいはそれに感化された人の心の中に受け継がれるのかもしれません。

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  4. Yoshiさん こんにちは。 
    嬉しいコメントをありがとうございます (゚∇^*) ♪
    いつもチェコからお越しですね。そちらは長くご滞在なのでしょうか?
     おっしゃられる通り、人が恐れるのは魂のゆくへではなく、実は誰からもその存在すら忘れ去られる事なのかもしれませんね。誰かの記憶に僅かでも残るのであれば報われことでしょう。
     泡となり海に溶けた人魚姫。哀しいお話しですが、彼女の存在はおそらく王子の心に残ってくれる事でしょう。 そう思えば彼女の想いは報われますね! (゚ーÅ)

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  5. Gomaちゃんの思いがけない登場にフフッてなりましたよ。
    私自身は死んだら泡になって消えていくのもいいなって気がしています。
    本当に、亡くなった人をいつも思い出すことが一番の供養ですね。
    人魚姫、この本ずっと好きで大事にしていましたが、どこにいってしまったのか・・・

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    1. Keikoさん いつもありがとうございます。
       keiko さんの潔さはどこから来るものかしらと度々考えます。そんな潔さが理想なのですが、私はなんだかんだ理屈をこねても「存在の耐えられない軽さ」に恐らく怯えてます。(>_<。)

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  6. ご無沙汰しています。
    実は今月、父が急逝し法要の行事と整理に追われ、気が付けばこの月も終わろうとしています。
    あまりに突然だったので、まだ父がどこかにいるような気がします。
    私たち娘は、父は14か月前に逝った母と喜びの再会をしていると信じられることで、悲しみというよりは安らぎの気持ちさえあります。

    「私自身は死んだら泡になって消えていくのもいいなって気がしています」・・私もまさにKeikoさんのおっしゃるのに同感です。
    父の死の後に、初孫の誕生があります。新しい生命に引き継がれ、大いなる自然の一環を感じます。

    どの絵も写真もブルーがとても美しいですね!感動するやさしさと美しさです。ゴマちゃんもキマってますよ^-^

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    1. cosmosさん おはようございます。
       お忙しいご様子だったので、少し心配していました。
       ご尊父様のご逝去に際し心よりお悔やみを申し上げます。
       
       そして、お孫さんのお誕生 おめでとうございます。
       哀しみと喜び、そんな命のつながりを 私達もこれから必ずや感じる事でしょう。

      ゴマの珍しく凛々しい表情が、なんだか面白いです。
       お褒め頂き うれしいです。

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