2014/07/01

But beautiful

その人は大きなマドロスパイプを銜え、
セッターを先に立て、長靴で霜柱を踏みしだき乍ら、
初冬の天城の間道の叢をゆっくり分け登って行った。
二十五発の銃弾の腰帯、黒褐色の革の上衣、
その上に置かれたチャアチル二連銃、
生きものの命絶つ白く光れる鋼鉄の器具で、
かくも冷たく武装しなければならぬものは何であろうか。
行きずりのその長身の猟人の背後姿に、
私はなぜか強く心惹かれた。

A large seaman's pipe in his mouth,
A setter running before him in grass,
The man strode up the early winter path of Mount Amagi,
And frost cracked under boot-sole.
The band with five and twenty bullets,
The leather coat, dark brown,
The double-barreled Churchill―
What made him cold, armed with white, bright steel,
To take the lives of creatures?
Attracted by the tall hunter's back,
I looked and looked.

Alberto Magnelli

その後、都会の駅や盛り場の夜更けなどで、私はふと、
ああ、あの猟人(ひと)のように歩きたいと思うことがある。
ゆっくりと、静かに、冷たく――。

Since that time,
At the stations of great cities,
Or at night in amusement quarters,
I sometimes dream:
I wish his life―
Slow, calm, cold.
 

 そんな時きまって私の瞼の中で、猟人の背景をなすものは、
初冬の天城の冷たい背景ではなく、どこか落莫とした白い河床であった。

Moments shift the hunting scene:
A bleak, white riverbed,
Not Mount Amagi's early winter cold. 


そして一個の磨き光れる猟銃は、中年の孤独なる精神と肉体の双方に、
同時にしみ入るような重量感を捺印しながら、
生きものに照準された時には決して見せない、
ふしぎな血ぬられた美しさを放射しているのであった。

And the glittering hunting gun,
Stamping its weight on the lonely body,
Lonely mind of a middle-aged man,
Radiates a queer, austere beauty,
Never shown when aimed at life.


"The Hunting Gun "
Yasushi Inoue was a Japanese writer of poetry,
essays, short fiction, and novels.

「猟 銃」  より / 井上 靖
4人の男女の4者4様の複雑な心理模様を描き切った
恋愛心理小説です。


先週末、横浜から静岡県 三島まで 在来線グリーンでぶらり旅。
クレマチスの丘 にある 「井上靖文学館」 
「ベルナール・ビュフェ美術館」 を訪れました。

We made a short trip of about two hours each way
by a conventional railway line
from Yokohama to Mishima.
Our purpose for this trip was to eat broiled eel and visit to
Yasushi Inoue Literary Museum & Bernard Buffet Museum.



 
 




  
家を出たのが昼前のうえ
のらりくらりランチの鰻を食べていたので
クレマチスガーデンを見る時間がなくなってしまいました。
何時もこんな感じです。 あ~あ残念

 

あじさい 井上靖

雑木の青葉がむんむんした幾つかのエネルギーの固まり
になって、幾段にも重なり合っている。 そしてその一番
下から、薄紫のあじさいの花が顔を覗かせている。 この
構図を支え、安定させるために、雨は降るべくして降っ
ているのである。 


雨期にはいってから急に野生を取り戻した白い紀州犬が、
時折何ものをも信じない孤独な目をして、あじさいの花
の傍(そば)にうずくまる。 すると、その度に雨は烈しくなる。
雨勢は盛んなるべくして盛んになっているのである。
 

時に雨脚が消えて、薄ら陽がただようことがある。私の
思いがあじさいの根もとにぴったり寄り添った時である。
人間の精神をごく稀に訪れる平安さも所詮は多少の
不幸と無関係ではなさそうだ、――たとえて言えばそん
な私の思いが。

 
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Love is funny, or it's sad,
Or it's quiet, or it's mad.
It's a good thing, or it's bad,
But beautiful...


Love is tearful, or it's gay,
It's a problem, or it's play.
It's a heartache either way,
But beautiful...




恋は可笑しかったり、悲しかったり
静かだったり、騒々しかったり
良いか悪いか分からないけれど
でも、美しい

涙をためたり、浮かれてみたり
悩みだったり、駆引きだったり
何にせよ心の痛むことだけれど
でも、美しい

12 件のコメント:

  1. こんばんは。いつも素晴らしい作品のブログを見てとても感動しています。 以前から、Anzu 様のブログは理解するもので無くて「感じる」ものと思っています。
     ビュフェ美術館にジャンプしてみたら、”「素直な愛情をもって、絵と対話してほしい。絵画はそれについて話すものではなく、ただ感じ取るものである。ひとつの絵画を判断するには、百分の一秒あれば足りるのです」。”こんな文章を読みました。
     何か相通ずるものが有ると思いました。
     鰻とのミスマッチ?も楽しいです。

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    1. Minoruさん こんにちは! いつもありがとうございます。
       常識的、論理的に話をすすめる事ができないので こんな変なブログになっています。(笑)
       今回は、小説 「狩猟」の中にある詩をご紹介したくて、イメージに合う絵をかなり探しました。 あきらめかけていたところ、FaceBook の海外の友人が教えてくれたアルベルト・マグネリの抽象画が不思議な程マッチしていて嬉しいです。 絵は理解するのではなく、好きか、そうではないかかな? どことなく恋愛と一緒ですね。 百分の一秒で恋はできそうですから (*゚ー゚*)
      おっしゃられるように、ビュッフェ美術館の流れではフレンチあたりが絵になりますね (笑)
      鰻 美味しかったです ! (゚-、゚)
       

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  2. 井上靖とMagnelliがこういうコラボになるのですね。Anzuさんの豊かな鋭いセンスで、あらゆる分野で一杯に詰まった引き出しから、自在に引き出して造りあげておられるのがすごいです。
    ジャズ?曲、歌詞も曲もいいですね。含蓄のある柔らかい歌声でさりげなく歌っているのが素敵です。

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    1. cosmosさん こんにちは!
      すっかりご無沙汰してしまいました。 早くも7月となりましたね。 
      いつも頂くコメントを 嬉しく拝見しています。
      今回の歌は、「猟銃」の どこか哀しい恋愛心理小説を 「それでも恋は美しいものですよ」 と肯定的に歌う歌詞となっていて救われました。 西宮、明石、夙川、四条など関西の地名が多く出る小説なのでつい引き込まれました。 川*'-') !

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  3. 文学、絵画、音楽、花、動物、食べること・・・と英語、そして浮遊感、Anzuさんの魅力満載のポストですね。ビュッフェの黒のタッチいいですね、リトグラフが好きです。ビュッフェ美術館のこと知りませんでした。

    お悔やみの言葉ありがとうございます。2年前に晴天の霹靂のごとく、肺がんと診断され、腕の骨にも転移していましたが、幸運にも老衰の方が肺癌の進行よりも早かったようです。心の準備はできているつもりでしたが、やはりつらいものですね。心に空いた穴を純真無垢な孫たちが癒してくれています。

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    1. Yokoさん こんにちは。
      いつもありがとうございます。
       
      お母様と一緒にご自宅で過ごされた時間と同じような時間を、私達も持つように努めたいと考えています。 ご家族の悲しみはご家族が癒してくれるのですね。

      私のポストの浮遊感とは何だろうと、今朝 通勤中に考えてみましたが、やはり解りませんでした。

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    2. あれ~、悩ませてしまってごめんなさい。正しく言葉を理解していないか、適切な言葉を選べていないかのどちらかでしょうね。このポストではそう顕著ではないのですが、(私が)小説の世界を漂いながら違った次元で小説の言葉を抽象画で表している世界に入り込んでいる気がして、その後現実の世界の風景を眺めているという、何か違った時間、次元をふわふわ移動して遊んでいるような気がしたもので。

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    3. Yokoさん こんにちは。
      さらに、ご感想を頂き ありがとうございました!

      いつもいろんな事を 妄想、夢想しながら、あるひとつのストーリーになるよう 写真や絵で表現したいと考えています。 それにお付合い頂ける皆さんを ありもしない?次元へお連れしているのかもしれないですね。 
      もし、そうであれば とても嬉しく思います !

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  4. Japanese Arr & Garden is just PURRFECT !
    My mom's brother is crazy about Japanese Comic. And he came to surprise my mom & daddy at the airport at 4.30 am. ( departures ). Mom was super grateful for what he did before she know her brother came to send her home because it was the same day as the Japanese celibrity left ...TWO IN ONE :)
    X

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    1. Hi ! (=´∇`=) Mr.Puddy
      I'm glad of your stopping at my post.
      That's true. These are flowers in someone's passionately well attended garden.
      What's more, children aren't the only ones who love comics.

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  5. 紫陽花奇麗ですけど、やっぱりウナギが美味しそうですね^^
    Auzuさんのポストの浮世感はAnzuさんの感性の多彩さによるんやないでしょうか?紫陽花と鰻のランチとのミスマッチが良い例ではないでしょうか^^

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    1. Yoshiさん こんにちは!
      お越し頂き、不明点に回答をありがとうございます。
      軸がブレブレと言うよりは、好きならなんでもありでしょう 的な考えがイカン訳ですね。
      鰻は旨い。 紫陽花は綺麗。 そのミスマッチ?(・-・)?が分らんわけで・・・

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